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カテゴリ:受験生の生活

デジタル教材に頼りがち

小五の息子が来年度中学受験をする予定です。私の家にはiPadとwindowsパソコンがあり、それらにいわゆる「ウェブ教材」というのをいくつかダウンロードして子供に使わせているのですが、最近ちょっと困ったことが起こっています。息子の志望校は開成や筑波大附属駒場のような最難関校ではないものの、普通の中学受験生からすればそれなりのレベルに位置する中学校です。ですから、まず塾に通わせ、来たる入試に向けて少しずつ準備を始めようと思い、教育の一環としてウェブ教材も導入しました。しかし最近、子供がウェブ教材ばかりを好んで学習するようになり、学校の勉強や塾の教材をおろそかにするような傾向が出始めたのです。なぜそのようなことになってしまったのだろうかと思い、子供に確認してみましたら、「ウェブ教材の方がただ机で勉強しているより楽しいから」と言います。そこで息子の使っているウェブ教材を見てみると、確かに視覚的にわかりやすいものが多く、例えば歴史の授業でも、覚えやすい語呂合わせを音楽付きで紹介していたり、小学生にも理解しやすいストーリー仕立てになっているものもあり、確かにこれはとっつきやすそうだと思いました。

しかし問題なのは、それぞれのウェブ教材が中学受験に必要と思われるレベルの授業を展開していないのではないかということです。先ほどの歴史の授業を例にとりますと、教材で覚えた内容を確認するミニテスト機能がついているのですが、それは一問一答形式がほとんどで、深い理解を促すような解説も充実しているとは言い難いものでした。他の教科についても少し確認してみましたが、例えば理科など考察力が求められる科目についても、「とっつきやすい」イメージのみが踏襲されているようで、このような勉強で受験に必要な力が身につくのだろうかと思ってしまいます。

しかも、さらに問題なのは、そのウェブ教材には受験で使わない「英語」の学習まで先取りとしてできるようになっており、息子がそれにはまっているようなのです。その教材では、中学で習うような英単語や文法なども実践的に学ぶことができるらしく、みんながやっていない内容がわかるようになったということで子供は満足している様子です。親としては、子供が英語に興味を持ってくれるというのは嬉しい限りなのですが、やはりまずは中学受験のことを第一に考えて欲しいと思います。

インターネット等を見ましても、ウェブ教材については賛否両論あり、このまま使わせ続けてよいものかためらってしまいます。中学受験に役立たないというのであればウェブ教材の代わりに塾や学校の勉強を徹底させようと思いますが、ウェブ教材が子供の知的好奇心を刺激しているという事実も確かにありますので、親としては安易に使用をやめさせられないというのが現状です。

プロの塾講師、家庭教師の方から見て、ウェブ教材というのは中学受験に有用であると思われますか?ぜひ回答をよろしくお願いします。
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回答者
櫻井
回答日時:2019/05/22 23:48:41

デジタル教材との向き合い方

私は都内で主に中学受験生を指導する塾講師です。
近年、インターネット技術の発達により、様々なウェブ教材が手軽に利用できるようになりました。質問者様のご質問にありました通り、ウェブ教材はその圧倒的な視覚的、聴覚的優位性を背景として子供たちの学習を大きく変化させようとしています。

このような中、ご質問のようにウェブ教材に没頭してしまうお子さんは少なくありません。やはり従来のような机に向かって問題集や参考書とにらめっこする勉強よりはるかに刺激的で、学習と言うより遊びに近い感覚で勉強できるからでしょう。

私はウェブ教材について、その利用自体は何の問題もないと思っております。しかし、注意していただきたいことがあります。それは、「ウェブ教材は学習のきっかけに過ぎない」と言うことです。

ご質問の通り、ウェブ教材は視覚、聴覚的にお子さんの学習意欲を刺激することができると言う利点があると同時に、深い情報まで掘り下げられないと言う特質も持ちます。ですから、ウェブ教材での勉強は質問者様のように受験を見据えた場合、勉強のきっかけ、あるいは知識の定着の補助程度の意味しか持ちません。そこからより深く、具体的には入試に堪えるだけの学力を身につけるためには、結局問題集や参考書も併用しながら、自らの手で解答をノートなどに書き、採点(添削)し、間違いを正していくという作業が絶対に必要なのです。

インターネットが発達した現在においても、この「自らの手で書く」ということがより深い定着につながるということは立証されています。ですから、質問者さまへの回答といたしましては、「ウェブ教材は必要最低限度、メインは塾の問題集や参考書の徹底習得」であると考えてください。

そして、お子さんが英語に興味を示しており、その勉強に没頭しがちであるとのことですが、これについても、学問に興味を示すこと自体は学生として好ましいことです。実際、英語など語学については先取り学習によって中学入学後に周囲と大きく差をつけることが可能で、もしそれができればお子さんにとっても大きな自信となるでしょう。しかし、目的が中学受験となれば、最終目標は志望校に合格することですから、「必要のない」勉強に熱中しているのも考えものです。ただし、親御さんが無理やり必要な勉強だけをさせようとするとお子さんの学習意欲を削ぐことにもつながりかねませんので、例えば普段は学校での学習は当然として、塾の教材をメインに据え、夜にまとめてウェブ教材で復習し、その「おまけ」として英語学習をさせてみてはどうでしょうか?その際、できれば質問者さまもお子様とご一緒に勉強されると、たとえ今までより英語に触れる時間が少なくなったとしても、親御さんと一緒に勉強したという実感が得られて他教科へのやる気は失われないのではないかと思います。

今の子供たちはインターネットを意のままに使いこなしているように見えますが、ともすると自らで制御を効かせられないということがままあります。これを機に、ウェブ教材との向き合い方をお考えいただければと思います。